UCLAの人文科学部への寄付として過去最高額
ジャパン・パスト&プレゼントは、日本人文科学研究における拠点としてUCLAの地位を強化するだけでなく、本校がこの分野をグローバルに牽引していく多角的な取り組みです。
Sean Brenner (ショーン・ブレナー)
October 3, 2024
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日本の経営者で篤志家の柳井正氏より、UCLAの人文科学部に3,100万米ドルの寄付金が贈呈されました。これは、本校の人文科学部への寄付として、過去最高額となります。
ファーストリテイリングの代表取締役会長兼社長であり、アパレル企業・株式会社ユニクロの創業者である柳井氏による今回の寄付金は、柳井イニシアティブ・グローバル・ジャパン・ヒューマニティーズ・プロジェクトの活動を支援するためのものです。同イニシアティブは、
柳井氏からの250万米ドルの寄付を受けて2014年にUCLAで設立され、東京の早稲田大学と提携して運営されています。
2020年には、柳井氏より柳井イニシアティブに2,500万米ドルのご寄付をいただきました。これは当時、UCLAの人文科学部への個人からの寄付金としては過去最高額でしたが、今回のご寄付はその記録をさらに上回るものです。
UCLAのダーネル・ハント総長代行は、「柳井氏のこれまでの多大なご支援に加え、今回の新たなご寄付は、日本人文科学の研究を大幅に前進させ、この分野の主要な研究拠点としてのUCLAの地位を確固たるものにし、UCLAの世界的な影響力と認知度を大きく高めるでしょう。柳井氏の寛大なご寄付により、UCLAは、政治・言語・文化の壁を越えて世界中の研究者が集い、アイディアを探究・交換する拠点として今後も成長を続けるでしょう」と述べています。
新たな寄付金の大部分は、UCLAの東アジア言語文化学科をベースに展開されるジャパン・パスト& プレゼントを支援することになります。ジャパン・パスト&プレゼントは、日本人文科学研究における拠点としてUCLAの地位を強化するだけでなく、本校がこの分野をグローバルに牽引していく多角的な取り組みです。
柳井氏は、「UCLAをはじめ世界各地における日本人文科学研究を支援できることを誇りに思います。世界を形成する慣習や芸術形態を共有し、尊重することは、とても重要なことです。人文科学や芸術は、私たちが人として互いを理解し、思いやることを可能にします。ジャパン・パスト&プレゼントがこの重要な研究をどのように拡大し、充実させていくのかを楽しみにしています」と語ります。
ジャパン・パスト&プレゼントは、日本人文科学研究や教育のリソースへの容易かつ公平なアクセスを促進し、世界各地の研究者間のより緊密な連携を育むことで、日本人文科学研究に変革をもたらすことを目指す取り組みです。今年3月に発表されたウェブページがその活動の拠点です。
UCLAにおける日本文学の教授であり、柳井イニシアティブとジャパン・パスト&プレゼントのディレクターでもあるマイケル・エメリック教授は、「日本人文科学の研究者は、世界中の研究者と共同研究を行う機会を長らく求めてきました。しかし、研究者同士が互いを見つけ、関係を構築することはこれまで非常に困難でした。研究分野の分類方法が異なることが原因の場合も多々ありました」と述べています。
通常、日本以外の大学には、日本人文科学の独立した学部がありません。そのため、研究者は、アジア研究、比較文学、外国語、時には英語学や英文学など、多岐にわたる学術分野に所属しています。
新たなつながりを築き、新たな対話を始める
エメリック教授は、「ジャパン・パスト&プレゼントは、研究者が組織の枠や国・地域の境界を越えて人間関係を構築することを奨励するため、資金を提供します。このことは、より多様な背景を持つ研究者にも新たに焦点を当てることにつながります」と話します。
また、「私たちは、世界中の研究者によるリソースへのアクセス、研究成果の可視化の双方において、公平性を確保したいと考えています。そして、ジャパン・パスト&プレゼントが、研究者が求めるさまざまなリソースを提供し、彼らが日々活用するオンラインの拠点となることを願っています。世界各地の研究者にこのような空間を提供することが、日本人文科学を真にグローバルな分野として再構築する鍵となります」とも述べています。
柳井正氏
この分野では、日本語と英語で出版された研究成果がしばしば最も注目を集めますが、ジャパン・パスト&プレゼントでは、他の言語によるリソースにも焦点を当てます。例えば、研究者に見やすい形で、さまざまな言語で書かれた世界中の最新の書籍や学術誌をひとつのウェブページにまとめています。ジャパン・パスト&プレゼントの日々の運営業務はオペレーション・リーダーのポーラ・カーティスが行っています。ウェブサイトに掲載される研究事業や教材の開発を行うチームへの資金援助、紙媒体の文書の電子化を目的とした大規模事業の立ち上げ、UCLAや早稲田大学での学術シンポジウムの開催なども予定されています。
「欠かせないリソース」
ジャパン・パスト&プレゼントのウェブサイトは今年3月に公開されました。それ以来、着実に新しいコンテンツが追加されています。その中には、日本の障害学に焦点を当てたプロジェクト、日本の五島列島における「隠れキリシタン」の子孫へのインタビュー、近世の日本における男性同士の悲恋に関する貴重な写本に注釈を豊富に盛り込んだ電子版である「Blood, Tears, and Samurai Love」(血と、涙と、武士の男色)プロジェクトが含まれます。
ジャパン・パスト&プレゼントの設立を称賛する研究者の一人は、ニューヨークのコロンビア大学で日本文学・文化の教授を務めるハルオ・シラネ氏です。同氏は、この取り組みを「幅広い分野の研究者や学生、そして一般の人々にとって画期的で多面的なリソース」だとしています。
シラネ氏は、時代を超えた多様なテーマの学術研究を身近なものにするジャパン・パスト&プレゼントを高く評価し、「日本に関心のある人にとって、これは欠かせないリソースとなるでしょう」と語っています。
UCLA人文科学部のアレクサンドラ・ミナ・スターン学部長は、「柳井氏の素晴らしいご寄付のおかげで、UCLAは日本人文科学の最先端に立つことができます。ジャパン・パスト&プレゼントは、研究者だけでなく世界中で文化に携わる人々にとっても重要な拠点となるでしょう。日本人文科学とUCLAを継続的にご支援いただいている柳井氏に心から感謝いたします」と述べています。
エメリック教授は、「柳井イニシアティブの創設10周年にあたる2024年にジャパン・パスト&プレゼントが設立されたことは、この分野がきわめて活気あるものであることを示しています。この取り組みがロサンゼルスという都市にある、トップの州立大学のひとつで行われていることも意義深いことです」と語ります。
「州立大学は、日本人文科学の分野を多様化し、より公平なものにするための活動を行うのに理想的な立場にあります。また、ロサンゼルスには、日本とのつながりが深い大規模な日系人コミュニティがあり、地理的にも日本に近いなど、多くの利点があります」とも述べています。
このご寄贈は、国際交流基金が実施する特定寄付基金制度を通じて実現しました。同基金は日本との文化・知的交流を促進する組織です。過去30年以上にわたり、UCLAの数多くの文化プログラムを推進し、資金援助を行ってきました。